ランキングの計測方法は、Webアンケートを通じて「現在居住している自治体・駅」と、その自治体・街に住み続けたいかと、街の魅力項目45項目について、その魅力を自分の住む街に感じるかなどを回答していただき、ランキングしたものだ。今年度からは、
●「子育てしやすい街ランキング」(図書館+病院+子育てに関する自治体サービス+子育て環境+教育環境+防犯+公園などの魅力項目の総合点の上位ランキング)
●「美味しい街ランキング」(商店街+コスパがよい店+雰囲気などがよい店+水が美味しい+地域の食文化などの魅力項目の総合点の上位ランキング)
――など、さまざまな観点による魅力ある街についてもランキングを公表している。
その結果、「住み続けたい街ランキング2026関西版」の総合ランキングはこのようになった。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」
毎年発表している「住みたい街ランキング」は“住んでみたい”という憧れの要素が強いが、隔年で調査している「住み続けたい街ランキング」は居住者だからこそ感じるリアルな魅力が反映されている点が大きな違いだ。
「住み続けたい街(駅)ランキング2026 関西版」総合ランキング1位、加えて兵庫県内ランキング1位となったのが、「住み続けたい駅」という設問で前回4位だった「さくら夙川」が首位に躍り出た。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」
兵庫県西宮市にあるJR神戸線「さくら夙川」駅は、阪急神戸線・甲陽線「夙川」駅、阪神本線「香櫨園」駅、同線「西宮」駅の利用圏内でもあり、大阪市中心部や神戸市中心部にアクセスしやすい。さくら夙川はそれらの駅のほぼ中央に位置し、住民からは夙川エリアを代表する駅と認識されているようだ。交通利便性の高さが街(駅)の人気を支える大きな要因となっている。
駅舎の西側には、駅名の由来となった西宮市を代表する河川の一つ「夙川」が流れている。夙川の沿岸には「夙川河川緑地」があり、春にはソメイヨシノを中心にサトザクラやオオシマザクラなど約1300本の桜が咲き誇る。公益財団法人「日本さくらの会」による「さくら名所100選」に選定されたお花見の名所でもある。

2016年より毎年3月~4月に開催される「さくらウィークにしのみや」の期間、夙川沿い約400mの桜並木が夜間にライトアップされ幻想的な夜桜を楽しめる(画像提供/苦楽園ストアーズミーティング)
夙川沿いは閑静な住宅地だ。美術工芸品の展示や文化教室の会場として使われている「旧山本家住宅」や、1932年に建てられたゴシック・リバイバル様式の大聖堂「カトリック夙川教会」など夙川を象徴する建物があり、阪神間モダニズムの文化や歴史を感じられる。住民が評価する街の魅力の1位が「街の住民がその街のことを好きそう」、3位が「住宅街が整然として美しい(通りや並木など)」となった背景には、上記などの施設があるからだと考えられる。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」

1921年、阪神間初のカトリック教会として発足したカトリック夙川教会(写真/PIXTA)
近年は地元の商店会「苦楽園ストアーズミーティング」加盟店約200店舗による「まちおこし」が盛んだ。お店を巡る周遊マルシェ「苦楽園・夙川マルシェ」(年3回)や夜桜のライトアップ、約60店舗が無料でお菓子を配るハロウィンイベント、子どもたちのお仕事体験イベントなど、地域住民の交流機会が増えてきている。

2023年から始まった「苦楽園・夙川マルシェ」。写真はプチトマトすくい(画像提供/苦楽園ストアーズミーティング)
「農協市場館 彩菜さくら」は西宮市南部地区で初めて誕生したJA兵庫六甲直売所だ。地元生産者による新鮮な野菜や果実などが販売されている。こうしたマルシェや直売所の誕生が街の魅力2位「地域の食文化を楽しめる(地元食材や地酒・地ビールなど)」につながっているとみられる。

「農協市場館 彩菜さくら」は西宮の生産者約50人が育てたフレッシュな野菜、フルーツ、お米などが並ぶ(写真/吉村智樹)
2021年9月にオープンした「夙川グリーンプレイス」は、ショッピングセンターでありながら公園や広場の役割も果たしている。小児科や歯科などクリニックもあるため、子育てファミリーにも好まれている場所だ。

公園や広場の役割も果たす夙川グリーンプレイス(写真/吉村智樹)
「住み続けたい街(駅)ランキング2026 関西版」大阪府1位となったのが「谷町九丁目」駅だ。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」
大阪市天王寺区にある谷町九丁目駅は地下鉄(Osaka Metro)谷町線と千日前線が乗り入れる大阪市内の主要駅の一つ。さらに徒歩圏内には近鉄「大阪上本町」駅もあって難波や梅田などへのアクセスがよい。地下連絡通路を利用すれば雨の日でもスムーズに乗り換えや移動が可能だ。

地下鉄の「谷町九丁目」駅構内から地上へ出ると東に21階建ての高層ホテル「シェラトン都ホテル大阪」が見える(写真/吉村智樹)
駅と駅を結ぶ地下連絡通路は近鉄百貨店上本町店や、飲食店がひしめく「うえほんまちハイハイタウン」とも連結している。近鉄百貨店の南側に接する複合ビル「上本町YUFURA(ユフラ)」には新歌舞伎座もあって舞台公演を堪能できる。街の魅力2位に「街に賑わいがある」がランクインした理由は、こういった買い物や娯楽を楽しめる環境にあるからだろう。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」

「近鉄百貨店上本町店」や「うえほんまちハイハイタウン」へは地下通路でもつながっている(写真/吉村智樹)
この街の魅力1位は「教育環境が充実している」。谷町九丁目は文教エリアとしても名高い街で、周辺には四天王寺中学校・高等学校、清風学園、大阪星光学院中学校・高等学校などの私立校が集積している。
駅を降りると生國魂(いくたま)神社をはじめ大小の寺院がひしめいているのも谷町九丁目の大きな特徴だ。豊臣秀吉が大阪城を築いた際、防衛線として多くの寺社を集中的に配置または移転させたのが理由という説がある。

大阪最古の建立という説があり、「いくたまさん」の愛称で親しまれる「生國魂(いくたま)神社」(写真/吉村智樹)
このように長い歴史を誇る街であり、周辺には「天王寺七坂」と呼ばれる坂道のうち、真言坂や源聖寺坂もある。街の魅力8位に「この街らしさに愛着を持てる」が入っているのも納得できる。

真言宗の寺院が並んで建っていたことから名付けられた「真言坂」(写真/PIXTA)
谷町九丁目一帯では、2030年以降の着工を目指して、近鉄グループホールディングスによる大規模な再開発計画が検討されている(2025年8月発表)。主に「近鉄百貨店上本町店」の建て替えと1985年の開業から40年以上が経過した「シェラトン都ホテル大阪」の刷新が検討されており、「総投資額は1300億円を超える」との報道がある。今後、大きな変化が期待できる街だ。
「住み続けたい街(駅)ランキング2026 関西版」滋賀県1位は「膳所(ぜぜ)」駅。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」
2024年に本屋大賞を受賞し、2026年7月に舞台化された『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)の主人公の最寄駅として描かれ、一躍脚光を浴びた駅でもある。

駅を降りて「ZEZEときめき坂商店街」を歩けば、大きな“成瀬”が出迎えてくれる(写真/吉村智樹)
滋賀県大津市にある膳所駅は京都駅まで約10分とアクセスがよく、京阪石山坂本線「京阪膳所」駅と連絡しており乗り換えも便利だ。
街の魅力項目では1位「水が綺麗で美味しい」、2位「自然が豊富(山や海、森、川など)」と自然環境が2トップを占めた。これは琵琶湖の存在が極めて大きい。膳所駅から琵琶湖の湖畔までは徒歩約15分。道中の「ZEZEときめき坂商店街」には飲食店などが並び、湖畔へ向かう気分を盛り上げる。2018年に大型商業施設「Oh! Me 大津テラス」がオープンし、買い物もしやすくなった。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」

「Oh! Me 大津テラス」には30周年を迎えた滋賀のFMラジオ局「e-radio エフエム滋賀」のサテライトスタジオがあり、有名アーティストもやってくる(写真/吉村智樹)
大津湖岸なぎさ公園は総面積約 30.8 ha、全長4.8kmにわたる広い親水公園。おまつり広場、打出の森、なぎさのプロムナード、市民プラザ、サンシャインビーチ、晴嵐の道など施設が多彩。大津市が掲げる「水辺交観都市構想」を存分に実現している。2025年に和菓子メーカー たねやの新店舗「LAGO 大津」もオープンし、開業1年で約91万人の来客を記録した。

歩道が整備された大津湖岸なぎさ公園。湖岸でジョギングする人たちの姿もときおり見かける(写真/吉村智樹)

滋賀県を代表する和菓子メーカー「たねや」の新店舗「LAG0 大津」。琵琶湖の美しい風景を眺めながら、心と体を満たす時間を提供してくれる(画像提供/たねや)

LAGO 大津にあるカフェ「CHAYA」。スイーツだけではなく近江食材を使ったおこわやスープなどもいただける(画像提供/たねや)
街の魅力項目では3位に「寺社・仏閣など歴史情緒を感じられる場所がある」がきている。膳所は徳川家康が関ヶ原の戦いの後に築いた膳所城の城下町として栄えた街だ。徳川家康ゆかりの「膳所神社」や木曽義仲・松尾芭蕉が眠る「義仲寺」など歴史的な名所が点在している。市道幹1050号線は「膳所城跡の道」の愛称で親しまれ、膳所城跡公園は桜の名所として多くの花見客を集める。

明治維新によって廃城となった膳所城は現在、公園として市民に安らぎを与えている(写真/PIXTA)
他にもスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定される滋賀県立膳所高等学校をはじめ、滋賀大学教育学部附属幼稚園・小学校・中学校があるなど、文教地区としての側面も持つ。地域医療支援病院として質の高い専門医療を提供する「市立大津市民病院」も近い。2024年には西武大津店(2020年閉店)の跡地に大型分譲マンションが誕生し、ファミリー層からの人気もますます高まっている。
「子育てしやすい街(駅)ランキング」で総合1位となった「箕面(みのお)船場阪大前」駅。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」
2024年、大阪府箕面市に誕生した北大阪急行電鉄南北線の延伸区間に開業した新駅だ。地下鉄(Osaka Metro)御堂筋線と直通運転を行っており、梅田(大阪)まで直通で約25分、なんばまで約35分と、都心部へのアクセスがよい。
駅名に「阪大」と大学名が冠されていることからもわかるように、2021年に移転した大阪大学 箕面キャンパスの最寄駅である。一般人でもキャンパス内の散策、食堂、売店、オープンテラスの利用が可能となっており、市民の憩いの場にもなっている。
箕面船場阪大前駅には2021年に開館した約71万冊の蔵書を誇る「箕面市立船場図書館」や、「箕面市立文化芸能劇場」「箕面市立船場生涯学習センター」などの市の施設も隣接する。これらすべてが駅前の箕面市立船場広場でつながっており、地域に開かれた知の拠点となっている。こういった広場で地続きとなった施設が街の魅力項目3位「魅力的なコミュニティセンターや公民館がある」、7位「教育環境が充実している」、9位「魅力的な図書館施設がある」に表れるのだろう。

出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2026 関西版」

大阪大学、箕面市立船場図書館などを広い空間でつなぐ「箕面市立船場広場」(写真/吉村智樹)

箕面船場阪大前駅を出てすぐ目の前に広がる箕面市立船場広場(写真/吉村智樹)
駅周辺エリアは昭和50年代から大阪の繊維会社の本社や倉庫が集まる繊維問屋街だ。2019年にオープンしたライフスタイル複合施設「about her.」(アバウトハー)は、アパレルや雑貨のショッピング、カフェ、花・植物などを楽しめる人気スポット。2階フロアでは関西を中心としたクリエイターの展覧会などのイベントも開催。注目の画家や陶芸家、ガラス作家、写真家たちのアート作品に触れられる発信基地となっている。

ライフスタイル複合施設「about her.(アバウトハー)」は老舗繊維加工メーカーのアップサイクル商品も手掛けている。繊維の街の最先端シーンを垣間見ることができる(写真/吉村智樹)
駅の周辺は緑も豊かで、杉谷公園は春に桜が楽しめるとあって地域に親しまれている。他にも、市内を巡回する箕面コミュニティバス「オレンジゆずるバス」は子育てファミリーが利用しやすく、箕面市立病院や隣駅にある「みのおキューズモール」にも行きやすい。また、2026年10月には大規模タワーマンションが完成するなど、今後も若い層の流入に期待が持てる。
今回は2026年に上位となった4エリアの人気の理由を考察してみた。住み続ける点で公共交通の利便性や買い物環境のよさは重要視されるが、それだけにとどまらない結果となった。住民にとって大切な場所や風景といった街の魅力を守りながら進化を続け、新旧の住民がその変化を心地よく受け入れている街がランクインを果たしたという印象が強い2026年度調査だった。
*現地取材データは2026年8月時点のもの
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