リフォーム・内装
街を変えるリノベーション
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hato
2014年3月20日 (木)

「おばけやしき」がランドマークへ。「TSUNASHIMA CABIN」は街を変える!?

木造にネオン。街行く人を立ち止まらせる印象的な外観(撮影:奈良則孝)
撮影:奈良則孝

古い木賃アパートをはじめオーナーが手を焼く物件を、独自のスタンスで再生する「木賃デベロップメント」。彼らの手がける商業施設『TSUNASHIMA CABIN』が昨年10月にオープン。Before/Afterの変化や、そのプロセスを取材しました。

今回手掛けられたのは2週間後に取り壊し予定だった築40年以上の空き家

東急東横線・綱島駅から徒歩3分。商店街の一角にたたずむ『TSUNASHIMA CABIN』は、木造の懐かしい雰囲気に印象的なネオン看板が映える商業施設。以前SUUMOジャーナルでも紹介した木賃デベロップメント(詳しくは『初期費用ゼロでも物件再生?!「木賃デベロップメント」がやってきた!』参照)がリノベーションからリーシング、運営管理まで手がける第二弾物件です。メンバーであるスタジオA建築設計事務所・内山章さんに話を聞きました。

「築40年を超える空き家で、建物はボロボロ、庭は草ぼうぼう。地元の方たちからは放火や倒壊を心配する声が出ていました。このまま放置しては危ないと現オーナーが買い取り、建て替えのため2週間後には取り壊す予定だったのです。
物件を見せて頂いたところ立地がとてもよく、躯体もしっかりしている。すぐに投資額と併せてリノベーションのプランを提案しました」
提案はオーナーが想定していた初期投資額を大幅に抑えるもの。オーナーが綱島の街並みづくりに意識の高い地主さんだったこともあり、即決だったそうです。

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図1】工事前。黄色い増築部分が商店街の中で悪目立ちしている

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図2】右側が後にリノベーションされる既存の建物

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図3】築40年以上の木造民家。「おばけやしき」と呼ぶ子どもも

立地を活かし、ネオンの灯る「まちの顔」へリノベーション

あまり知られていませんが、古くは全国有数の桃の生産地で、天然ラジウム温泉の中心地として栄えた綱島。しかし現在の駅前商店街にはチェーン店が多く並び、そのおもかげは失われています。近隣にできた大型ショッピングセンターの影響か、駅前商店街の小規模スーパーは閉店。しかもこれは決して綱島だけでなく、全国のさまざまな地域で起きている状況です。

「どこの駅前でも見かける“よくあるあの店”にしたくなかったんです」

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図4】入居決定したテナントの要望を聞きながら間取りを決めていった(撮影:奈良則孝)

内部をすべて解体して断熱と耐震補強を施し、フルスケルトンの状態から水まわりを含む間取りを大きく変えていく一方、アルミサッシをあえて木製建具に変えるなど木造らしい味わいを強調。外観は元の雰囲気を活かしつつ、印象的なネオン看板を配しました。

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図5】手前が綱島駅へと向かう商店街の通り。通勤で通る人も多い

「良くも悪くも地元の方たちによく知られた建物だったので、その記憶を引き継ぎつつ“お店に生まれ変わった”ことが一目で分かるようなプランにしました。建物が小さく、住居から商業施設への用途変更の確認申請が必要なかったのもポイントでした」

初期投資を抑えることで家賃を下げ、若いテナントを誘致

テナントのリーシングも工事と並行し、木賃デベロップメントが担当しました。1階には、応募のあった複数のテナントの中から、ワインとストウブ料理がメインの気軽なフレンチ・レストランを選出。2階には綱島エリアに特化し、リノベーション物件も得意とする不動産会社が入居しました。

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図6】1階、テラス席のあるフレンチ・ビストロ「グレーヌ・マルシェ」(撮影:奈良則孝)

「駅前がナショナルチェーンばかりになってしまうのは、高い家賃を払い続けられるお店が少ないからです。でもチェーン店は、売上が下がればすぐいなくなってしまう。
リノベーションにより初期投資を抑えたため家賃を下げることができ、“綱島でがんばりたい”と言ってくれる若くてやる気のあるお店に入ってもらうことができました」

一部減築(増築部分を解体)し、テラス席と通りに面した前庭に。前庭は敷地内ながら家賃を設定せず、地域に開かれた半公共的な空間となっています。

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図7】前庭は通りからの連続性を持たせた半パブリックな空間(撮影:奈良則孝)

地元ママの憩いの場に。2階の不動産会社は路面店より集客アップ

「お母さん、おばけやしきがお店になってるよ!」完成間近の現場では、通りがかりの親子連れからこんな声が聞こえたそうです。工事中から地元の方たち、特に年配の方から声をかけられることも多く、「地元にとってランドマークになり得る」ことを実感したといいます。

オープン直後は「60〜70代くらいの地元の方が殺到しました(笑)。“何ができるか楽しみにしていたのよ”と声をかけて頂いたり、おばあちゃんが一人でランチを食べに来てくれたり」(内山さん)。
現在もレストラン客のほとんどが地元の30〜40代の方。「これまで綱島にはこういう落ち着いたお店がなかった」「居酒屋ばっかりだった」という声が多いそう。近くに保育園、幼稚園があるため子ども連れのママも多く、前庭はベビーカー置き場としても活躍しています。

「雪の日には従業員が前庭に大きなかまくらと雪だるまをつくり、子どもたちが集まって写真を撮ったり、遊んだりしていたようです。運営管理にも木賃デベロップメントが入っているので、暖かくなったら地域に開いていくイベントも開催していきたいと思っています」

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図8】2階に入居した「綱島不動産マーケット」入り口は、住居だったころの元玄関(撮影:奈良則孝)

さらに2階の不動産会社は、以前路面店を構えていたときと比較して、なんと集客が1.5〜約2倍に。

「そもそも2階に店舗を構えること自体不動産会社では集客に大きなダメージがあるのに、集客が増えるなんてあり得ないことです。(入居を決めた)社長さんの眼力が大きいですが、リノベーションや個性的な物件が得意な会社なので、建物をきっかけにお店に合うお客さんが来店してくれているようです」

「おばけやしき」がネオン灯るランドマークへ。まちを変える空き家リノベ

【図9】「綱島不動産マーケット」の応接間は、なんと和室。建物の雰囲気にマッチしている(撮影:奈良則孝)

ネガティブなイメージのついた建物をあえて活かし、ポジティブに転化させることで、子どもからお年寄りまで集う地域のランドマークへ。内山さんは「地元を愛するオーナーさんの理解があったからこそ、できたこと」と振り返ります。
『TSUNASHIMA CABIN』は、綱島というまちをどのように変えていくのでしょうか。これからがますます楽しみな物件です。

●木賃デベロップメント(Facebookページ)
https://www.facebook.com/mokuchindevelopment
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