東京大学の本部が置かれる本郷キャンパスがあり、日本屈指の文教地区ともいえる「本郷」。界隈は古くは夏目漱石や川端康成、宮沢賢治などの文豪が移り住み、昨今は秋葉原エリアも徒歩圏ということでIT関連ビジネスの者も多く見受けられるようになった。キャンパスを囲むように北は谷根千(谷中・根津・千駄木)、東に上野公園や御徒町。南は湯島、神田。そして西には小石川後楽園といった散策スポットも多く、休日を楽しむ人々も見受けられる。
そんな街の憩いの場所がTIES。パティスリーのイートインというと、ケーキが主役で珈琲は二の次になりがち。片や珈琲専門店でスイーツとなるとホームメイドのチーズケーキやアップルパイ、ホットケーキなどが定番である。が、ここはそれまでとはちょっと違う、ありそうでなかったパティスリーと珈琲喫茶のフュージョンカフェなのだ。
スイーツ番長(以下、番長)「店に入れば沢山のケーキが並ぶショーケース、そして奥からは珈琲の香ばしさが漂う。本格的な珈琲と本格的フランス菓子が同時に美味しく楽しめるとは、いったいシェフはどんなお方なのですか? 手づくりケーキ、ホームメイドスイーツという喫茶店はよくありますが、そんなレべルではありませんね。」
坂爪弘樹シェフ(以下、坂爪)「語るほどの大それた経歴はありません(笑)。元来、スイーツと珈琲が大好きで、学校卒業後に洋菓子製造の仕事に就き、新宿にあった、お菓子が自家製の高級喫茶店で5年にわたりネルドリップ抽出と製菓を務め、その後湘南のパティスリーで本格的なフランス菓子の製造を4年にわたりパティシエとして勤めました。」
番長「どちらもしっかりと修業を積まれたのですね。珈琲はコクと甘さ、そして独特のまろみと深みがあってとても美味しいですね。」
坂爪「珈琲豆はオールドビーンズでエイジングにより深みやコクが強まります。ネルでゆっくりと丁寧に淹れることにより、その美味しさを十分に抽出できるのです。」
番長「美味しい珈琲哲学ですね! ところでケーキの製造も珈琲抽出もシェフお一人でなさっているのですか?」
坂爪「店は妻と営んでおり接客は妻の担当です。お菓子づくりと珈琲を淹れるのは僕の務めです。開店営業中は珈琲を淹れるのに手いっぱいで、フランス菓子は片手間ではつくれませんから、毎日開店前と閉店後にここで仕込みや製造をしています。カウンターの奥にミキサーやオーブンがあるのはそのためです。」
番長「手間を惜しまないその姿勢に、本格的な美味しさが表れるのですね。ところで本郷・湯島という立地に出店した理由は?」
坂爪「当初は住まいのある神奈川の北鎌倉に出店を考えていました。しかし妻が東大病院に通院することになり、本郷に足を運んでいるうちにこのエリアの魅力に触れ、通院にも便利ということでこの地に店を開くことに決めたのです。」
番長「それは合縁奇縁ですね。」
坂爪「店名の“TIES”とはネクタイの“タイ”などの“結ぶ”という意味で、これに“s”がつく複数形になると“絆”という意味になります。僕らはこの地に縁合って、お客さんと珈琲とスイーツの絆を育むことができました。これからも、もっともっと美味しい珈琲とスイーツづくりに励んで、その絆を一層“太く”していきたいと思います。」
本格珈琲に自家製スイーツという店は多々あるが、個人経営でオーナー自らがパティシエでマスターであり、本格フランス菓子とネルドリップ珈琲を楽しめるのは、都内で唯一ここだけではなかろうか。本郷三丁目の交差点から御徒町に向かう春日通りにひっそりと佇むTIES。今日も珈琲好きやスイーツ好きが喋喋喃喃を楽しむステキな場所だ。
●サーカス(500円)
●モカ(400円)
●メレンゲシャンティ(480円)
1969年10月北海道生まれ。ドーナツチェーン店にて製造から店長を経て、神奈川県内のケーキ製造会社に勤務。後に新宿の高級喫茶店にて珈琲のネルドリップ抽出と製菓を務め、湘南の洋菓子店でパティシエとして勤務。2004年12月にTIESを開業。
TIES(タイズ)(取材、著、写真:スイーツ番長 / 取材、データ記事:蓮沼ちひろ)
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