農地を購入して家を建てることは可能? 必要な手続き、注意点を解説

公開日 2026年02月26日
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農地を購入して家を建てることは可能? 必要な手続き、注意点を解説

将来は地方で田舎暮らしをしてみたい。耕作放棄地が増えていると聞くけれど、個人が農地を買って家を建てたり、家庭菜園をしたりすることはできるのだろうか――? 結論から言えば、一般の個人が農地を購入して家を建てることは可能です。ただし、実現のためには法律の規制や諸条件を知り、適切な手続きを行わなければなりません。本記事では、行政書士・宅地建物取引士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士で、住宅購入に関連する各種契約書類の説明・作成に携わっている桜井鉄郎さんに取材、個人の農地購入について詳しく解説します。

農地は宅地より割安感が強く、価格の下落傾向も継続

宅地が家、店舗などを活用するための土地であるのに対して、農地は田、畑など耕作を目的とした土地です。桜井さんの概算によると「農地は宅地に比べて4割程度価格が低いイメージです」とのこと。しかも近年価格は下がり続けています。

農地価格は平成7年以降 30年連続の下落

一般社団法人全国農業会議所の調査によると、純農業地域(都市計画法の線引きをしていない市町村)の農用地区域の農地価格(全国平均)は、中田(※1)、中畑(※2)いずれも平成7年以降30年連続の下落となりました。いずれも最高価格となった平成6年(中田 200万2000円、中畑 137万8000円)と比べると、それぞれ 約47.8%、約44.0%の下落となっています。
※1・2 「中田」「中畑」は調査対象地であるそれぞれの旧市町村で、収量水準や圃場(ほじょう。農作物を栽培するための場所)の条件が標準的な水田・畑を指す

農地価格の推移を示す表組
平成23年以降、農地の価格は毎年1%台ずつ下落し続けている(出典:一般社団法人全国農業会議所 令和6年田畑売買価格等に関する調査結果(要旨)より引用)
農地価格の推移を示す棒グラフ
令和6年・令和5年の農地価格の対前年比増減率、および令和6年の平均価格をブロック別に示したもの。水田、畑いずれも平均価格が高いのは関東、東海、近畿。価格低下率では、特に東北、九州で水田・畑ともに減少率が大きかった(出典:一般社団法人全国農業会議所 令和6年田畑売買価格等に関する調査結果(要旨)より引用)

「価格下落の背景にあるのが、農業経営が厳しいだけに土地からの高い収益が期待できないこと、ならびに農業の後継者不足で、農地を購入したいという需要そのものが低いことが挙げられます。要はニーズが減っているため、それに伴って価格も下落しているというわけです」(桜井さん、以下コメント同じ)

農地を個人購入するために必要なアクションは?

では、実際に農地を探すにはどうすればよいのでしょうか。

各区市町村の農業委員会やオープンデータを活用

「最も手っ取り早いのは、各区市町村に設置されている農業委員会に『農地を買って住宅を建てたい』と目的を伝えて相談することです。どのエリアの農地を購入するか、見当をつける際に便利なツールなのが、農林水産省が運営しているオープンデータ『eMAFF農地ナビ』です。地域を指定して、そのエリア内で、“所有者が売却を希望している農地”を探すことができます。ただし、このサイトは基本的に情報提供のみなので、実際の購入については農地がある区市町村の農業委員会に相談する必要があります」

【関連サイト】
eMAFF農地ナビ

不動産会社への問い合わせも有効

また、比較的古くからその地域で営業をしている、地元密着型の不動産会社にも注目してほしいとのこと。

「全国展開している大手の不動産会社にももちろん農地の情報はありますが、地元の事情に詳しい地場の不動産会社のほうが、より多くの情報を持っているケースがあります。希望のエリア内にそうした不動産会社があれば、問い合わせてみてもよいでしょう」

農地にマイホームを建てるなら「農地転用」が必要

ただ、ひと口に農地といっても種類はさまざま。農地購入後、家を建てるためには農地の用途を、家を建てるための宅地に変える「農地転用」という手続きが必要であり、これが認められる土地は限定されています。

最も転用が認められやすいのは「市街化区域」内の「第3種農地」

農地には、『第1種農地』『第2種農地』『第3種農地』『農用地区域内農地』『甲種農地』の5種類があり、最も農地転用が認められやすいのは『第3種農地』とのこと。

「第3種農地は市街化の傾向がかなり進んでいる地域にある農地のことで。適切に農地転用許可が申請された場合は許可されるのが原則です。検討している農地が第3種農地であるかどうかは、農業委員会に聞いて確認できます。なおかつ、その農地が『市街化区域』に入っている場合は、農業委員会への届出だけで済ませることができます。そうした農地は、水道、電気、ガスなどのライフラインを引き込める環境が整っているケースが多いのですが、農地購入を検討する最初の段階で確認したほうがよいでしょう。ガスは都市ガスとプロパンガスとでは料金が異なります。ガス・電気はその地域のガス・電力会社、水道・給排水は自治体役所に問い合わせてみてください」

ちなみに「市街化調整区域」では、農業委員会への届出ではなく、許可申請が必要になります。
市街化調整区域では原則的にすべての開発行為に許可が必要であり、土地の利用の仕方や建築物などに厳しい制限が設けられるため、農地転用は非常に難しいのが実情です。

農地を探す段階で注意すべきこと

ほかの注意点を2つ紹介します。

  • 購入しようとする農地に、借地人や抵当権者などがおらず、権利関係がクリアかどうか
  • ハザードマップに照らし合わせ、水害の履歴の有無や被害に遭う危険度を確認

特に、水田として利用されていた農地は水分を多く含み、地盤のリスクが比較的高い場合があります。そのため、水田よりは畑として利用されていた農地のほうが住宅建築には適切な地盤であるといえそうです。

畑と住宅地
水田よりも含まれている水分が少ない畑のほうが、住宅建築には向いているといえそう(画像/PIXTA)

購入したい農地が確定した後はどうする?

候補となる農地が確定したら、農地所有者に対して購入の意思を伝えます。直接所有者に打診するのではなく、農業委員会を通じての連絡となります。

不動産会社など“プロ”のサポートが不可欠

「農地購入の交渉や書類の作成、土地の境界確定や地目変更登記などは専門知識が必要なため、農地購入をする個人の方だけで行うのは現実的ではありません。不動産会社さんなどに仲介に入っていただくのがベターだと思います。そうすることでトラブルを避け、円滑に購入を進めることができるでしょう」

では、仲介役となる不動産会社はどのように選べばよいのでしょうか。簡単なのはインターネットで農地、購入、仲介などのワードで検索して探すことです。

「農地を探す際、不動産会社に問い合わせをした場合は、その会社を含めて複数社に打診し、仲介料の見積額の比較や、仲介の内容、担当者との相性などで最終決定するとよいと思います。特に農地購入の取引実績を多く持つ会社なら、知見も豊富であるケースが多いです」

なお、農地所有者に購入の意思を伝える際には、ポイントがあります、とのこと。

「農地は地域社会と密接な関係にある場合が多いため、農地を宅地に転用し、その後、家を建てるとき、十分に周辺コミュニティーへ配慮する意思があることを示すと交渉を有利に進められる可能性が高まります。例えば、農地の周囲の景観になじむような外観デザインの家を建てるといった考えを伝え、農地所有者に『地域に溶け込みたい』とアピールするとよいと思います。なお、近隣住人への挨拶は農地の購入が確定した後でよいでしょう」

農地転用に要する期間は2週間が目安

市街化区域内にある農地を農地転用する手続きは、前述どおり、農業委員会への届け出のみで済ませることができます。提出書類は、所定の届出書/登記事項証明書/農地の位置図などです。届け出が委員会に受理されれば、転用は2週間程度で完了します(提出書類、転用までに要する期間は自治体によって異なる場合がある)。

「農地転用完了後は、法務局で地目を農地から宅地へ変更します。この手続きは1週間~10日程度となるケースが大半です。住宅を建てる際に住宅ローンを利用する方は、住宅を建てる土地が“宅地”でなければローンは実行されないので注意してください。ただ、農地転用の手続きと住宅ローンの審査は同時並行で進めることが可能ですので、金融機関にその旨を伝えておくとよいでしょう」

農地転用に必要な書類、期間など
※市街化区域内の農地を農地転用するケース
必要書類 所定の届出書
登記事項証明書
農地の位置図など
必要期間 農業委員会の受理/2週間程度
法務局での農地→宅地への地目変更/1週間~10日程度
※いずれも自治体によって異なる場合がある
上記の必要書類、期間は自治体によって異なるケースが多い。仲介役を頼む不動産会社などに確認しておこう(SUUMO編集部作成)

地盤調査・改良は欠かせないプロセスに

一般の宅地に住宅を建設する際、家を建てる前に地盤調査を行い、必要に応じて改良を行うことが重要です。農地においてもその重要性は変わりません。

怠ると重大なリスク発生の可能性も

水分を多く含むと考えられる“水田”ではなく、“畑”だった農地のほうが低リスクであると前述しました。しかし、購入した農地が畑として利用されていたとしても、やはり地盤調査は行い、強度を確かめておくほうが将来のリスクを回避できる可能性は高くなります。

「地盤改良を怠ると、数年後に地盤沈下などの深刻な問題が起こるリスクがあるかもしれません。言うまでもなく、地盤の強度は知識のない一般の方では判断できません。基本的には地盤改良工事に詳しい複数の業者に大まかな見積もりを依頼し、地盤調査を行うことをおすすめします。見積もりの金額が想定より高く、デメリットが強く感じられる場合は、農地購入自体を見送ることを検討しても良いと思います」

地盤改良の費用目安は70万円~200万円程度

地盤改良工事を依頼した場合、工期、料金はどの程度が目安になるのでしょうか。

「会社によってケースバイケースであり、幅が広くなりますが、工期は数日~1週間程度、料金は数万円~数十万円といったところです。仮に、その土地が水田として利用された来歴があり、100坪程度の場合、70万円~200万円程度の費用がかかる可能性があります。地盤改良費は安いものではありませんが、宅地に比べれば土地代が手ごろな分、地盤改良にはお金を惜しまず、将来のリスクを避けられると思います」

農地転用手続き→地盤改良工事の流れ
※市街化区域内の農地を農地転用するケース
1.購入する農地を検討 希望エリアの農業委員会や不動産会社への問い合わせ、農地ナビの活用など
2.農地確定後、購入を意思表示。並行してナビゲートしてくれる仲介役を決める 農業委員会を通じて農地所有者に購入の意思を伝えるのと並行して、不動産会社など専門知識をもつ第三者にサポートを依頼
3.農業委員会に対して農地転用の手続きを行う 市街化区域内にある農地の場合は、農業委員会への届け出のみで済ませられる。2週間程度で手続き完了予定
4.法務局で地目を農地→宅地へ変更 1週間~10日程度が目安。住宅ローン利用者は、住宅を建てる土地が“宅地”でなければローンは実行されないので要注意だが、金融機関に相談すれば、農地転用の手続きと住宅ローンの審査は同時並行で進められるケースが多い
5.地盤調査→地盤改良 宅地に地目変更後、地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良工事を行う。地盤改良工事の目安は工期が数日~1週間程度、料金は数万円~数十万円
6.住宅建築へ 工務店、ハウスメーカーなどの見積もり、プレゼンを吟味してどの会社で家を建てるかを確定、工事のフェーズへ
上記の流れをスムーズに進めるにあたっては、専門知識を有する不動産会社などナビゲート役が大きな役割を担う。探す際には慎重に選びたい(SUUMO編集部作成)

農地から宅地になると固定資産税はどうなる?

注意したいのが、農地から宅地に変わることで高くなる「固定資産税」です。地域によって異なりますが、農地に課される固定資産税の2~5倍程度高くなるケースが見られます。近隣の宅地の評価額を目安にして、資金を準備する必要があるでしょう。

「固定資産税は毎年1月1日時点での『土地の利用状況や用途』に基づいて評価されます。したがって、仮に2025年末に農地を購入し、農地から宅地への地目変更が2026年2月、引き渡しが2026年6月だった場合でも、2026年1月1日時点で『農地』で所有していたため、2026年の固定資産税は農地で評価された価格となります。固定資産税の評価替えのルールは、総務大臣が定める『固定資産評価基準』に基づくもので全国一律です。ただし、実際の評価作業は各区市区町村が行うため、地域の事情に応じた調整やわずかな誤差が生じることがあります」

まとめ

一般の個人が農地を購入して「農地転用」の手続きを踏めばマイホームは建てられる

認められやすいのは「市街化区域」内の「第3種農地」

地盤調査、地盤改良は欠かせないプロセス

農地から宅地に変更すると固定資産税が上がることに注意

SUUMOコンテンツスタッフ

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